朽ちようもない永遠の物語。文学的で格調高く、永遠の死と愛の香りのする名作です。時のないバンパネラを主人公としたからこそ、時の繋がらぬ浮遊感ある世界がこうも美しく生まれたのでしょう。
 永遠を「生きる」ポーの一族。でも生きてはいない。死んでもいない。自分は何なのか? 答えはない。時もない。仲間は死ねば消えてしまう、寂しさに新たな仲間を増やし、また独りになって・・・。あの人を連れて行きたい、けれど・・・。甘く苦い苦悩さえも永遠に続く。薔薇を求め血を求め、永住の地も得られぬ。 
 愛する人を失ったエドガー。結末でエドガーとアランがどうなったのかは謎のまま、物語も時を止める。
 ふっと描き出される瞬間は瑞々しい幸福に満ちている。触れれば壊れてしまいそうなこの繊細さ、もはやこの作品を別の媒体に移し変えることは不可能でしょう。朽ちようもなく、変わりようもない。「ポーの一族」は正に、血に染まりながらも永遠に無垢な人々の、真の物語なのです。

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