幻想的。夜に観たい映画です。
 原作の漫画ではモノローグが効果的に使われていたので、これを映画でどう表現するのかと思っていたのですが、観てみるとかなり練りこんで作ったのだなということがうかがえました。
 原作にあったギャグテイストをなくしたことで、より物語はシリアスに。美月も今時の女子高生から、少し清楚な女子大生にチェンジ。そして美月が「Last quarter」の記憶を持っているという設定に。絵描きのおじさんを登場させたことによって、この映画が現実と幻想のはざまを描いているのだということが伝わってきました。ラストの美月の笑みによって、月と人間たちの結びつきも表現されていたように思います。観ているうち、もしかしたらアダムも生前、さやかのことをイヴと呼んでいたかもしれない、と感じました。
 しかし気になったのがアダムの描き方。美月を連れ去りたいという衝動や葛藤が感じられない。原作で美月が柵の向こうの世界を「全てを見渡せる、そんな世界」と言っていることから、アダムは彼女がついて来ないということをわかっていて、それでも会いに来たのかもしれないと解釈するのは可能だけれど。生前からあまり感情を歌以外には示さない人だったのだろうけれど。そもそも死人なのだから生きている人とは違うのだろうけれど。衝動や葛藤を見せて欲しかったなぁ。残念。
 そのせいで、この映画はとっても映像が綺麗なのに、うすっぺらい印象になってしまったのかもしれない。これじゃhydeのPVです。

 原作を読んでから月を見上げるようになったけれど、これからもきっとそう。19歳の誕生日、わたしは夜空を見つめます。月が、生まれた時にくれたたくさんのメッセージを、もう一度聴かせてくれるでしょうから。

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