モーツァルトの生涯を、その挫折に焦点を当てて探った本。
著者は傑作「フィガロの結婚」「ドン・ジョヴァンニ」「コシ・ファン・トゥッテ」「魔笛」のアリアを紹介した上で、これらの傑作を生み出した彼の生涯について書き始めています。彼だけでなく彼に関わった人々の肖像画や書簡も掲載、また、後世の人々が彼の音楽にどう向き合っているのかについても多くページを割いています。
著者が「伝説となった現在の彼」ではなく「当時の人々と共に生きた、一人の人間としての彼」を書こうとしたからでしょう。
わたしは、アマデウス・モーツァルトという人は周りに才能を誉めそやされ援助されながら成長した人で、晩年の惨めな生活は彼自身の享楽によるものだと思っていました。栄光の人生を送った人だ、と。だから明るく華やかな貴族向けの曲を残しているのだ、と。しかし彼の生涯を辿ってみると、栄光は人生の初めだけだったということに気づきました。成長してもはや神童ではなくなった彼に対する風当たりは、甘いものではなかったのですね。当時の音楽家は貴族や王族などの有力者に援助されなければ食べていけない奉公人。騎士の勲章を与えられたりコンサート・マスターの地位を与えられたりしても彼は裕福にはならなかった。援助を求めても与えられず苦悩し貧窮し、その中で曲を書き続ける彼の姿を想像してわたしは愕然としました。だから彼は音楽教師の仕事もしていたのか、生活するために・・・調律をしていないピアノを弾かされるという屈辱に耐えながら! しかもただでさえお金がないのに、彼は有力者の娘と結婚するという道を取らず自分の愛する女性コンスタンツェと結婚(実際は彼女の姉であるアロイジアを燃えるように愛していたようですが)。幸せではあっても自分の道を余計に苦しいものにしたことは否めません。才能を代償とした苦悩、苦悩を代償とした才能、どう言えば良いのかわかりませんが、その中で数々の傑作を生み出していった彼の力は本当に凄まじい。また、わたしは彼が子どもの心を失わない純粋な人だったと知り、とても嬉しくなりました。もっと彼の世界を知りたいです。今までクリアーに絶望を見据えている彼の音楽が怖かったけれど、今も怖いけれど、知りたいです。
地図や年表も載っていて好感の持てる本でした。
著者は傑作「フィガロの結婚」「ドン・ジョヴァンニ」「コシ・ファン・トゥッテ」「魔笛」のアリアを紹介した上で、これらの傑作を生み出した彼の生涯について書き始めています。彼だけでなく彼に関わった人々の肖像画や書簡も掲載、また、後世の人々が彼の音楽にどう向き合っているのかについても多くページを割いています。
著者が「伝説となった現在の彼」ではなく「当時の人々と共に生きた、一人の人間としての彼」を書こうとしたからでしょう。
わたしは、アマデウス・モーツァルトという人は周りに才能を誉めそやされ援助されながら成長した人で、晩年の惨めな生活は彼自身の享楽によるものだと思っていました。栄光の人生を送った人だ、と。だから明るく華やかな貴族向けの曲を残しているのだ、と。しかし彼の生涯を辿ってみると、栄光は人生の初めだけだったということに気づきました。成長してもはや神童ではなくなった彼に対する風当たりは、甘いものではなかったのですね。当時の音楽家は貴族や王族などの有力者に援助されなければ食べていけない奉公人。騎士の勲章を与えられたりコンサート・マスターの地位を与えられたりしても彼は裕福にはならなかった。援助を求めても与えられず苦悩し貧窮し、その中で曲を書き続ける彼の姿を想像してわたしは愕然としました。だから彼は音楽教師の仕事もしていたのか、生活するために・・・調律をしていないピアノを弾かされるという屈辱に耐えながら! しかもただでさえお金がないのに、彼は有力者の娘と結婚するという道を取らず自分の愛する女性コンスタンツェと結婚(実際は彼女の姉であるアロイジアを燃えるように愛していたようですが)。幸せではあっても自分の道を余計に苦しいものにしたことは否めません。才能を代償とした苦悩、苦悩を代償とした才能、どう言えば良いのかわかりませんが、その中で数々の傑作を生み出していった彼の力は本当に凄まじい。また、わたしは彼が子どもの心を失わない純粋な人だったと知り、とても嬉しくなりました。もっと彼の世界を知りたいです。今までクリアーに絶望を見据えている彼の音楽が怖かったけれど、今も怖いけれど、知りたいです。
地図や年表も載っていて好感の持てる本でした。
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