池谷裕二、長崎 訓子 『進化しすぎた脳 中高生と語る「大脳生理学」の最前線』
2006年12月16日 おすすめの本一覧
最近テレビで、P81に載っている「ニューラル・プロステティクス(神経補綴学)」が紹介されているのを見ました。この本の記述通りに説明すると、ニューラル・プロステティクスは「身体の代わりになる機械を神経を通じて操縦する手法を研究する分野」(P81より抜粋)。もし研究が進めば、より性能の良い義肢の開発にも繋がるでしょうね。今後が楽しみです。
慶応義塾ニューヨーク学院高等部の生徒に対して著者が行った講義内容をまとめたのがこの本。
読んでみてわかったのは、脳というものは未だに謎に包まれていて、その謎を解明するのは非常に難しいということ。それでも、いえ、だからこそ脳は面白い。前頭葉、側頭葉など脳には様々な部位がありますが、同じ脳というものであるにも関わらず役割がそれぞれ違うというのがとても不思議です。
特にアルツハイマー病についての章は、読んでいてドキドキしました。神経細胞を壊す(注:麻痺させるのではありません)βアミロイドを生み出すのはAPPという遺伝子。このAPPをプレセニリンというものが切り取る(おそらくこれは正常な脳でも少しずつ起こっている)。そのAPPの切れはしがβアミロイド。アルツハイマー病はプレセニリンがおかしくなってAPPを切りすぎてしまうために起こるのかもしれない。βアミロイドが溜まって神経細胞が壊されると脳に老人班ができる、・・・と。怖いです。
ここでわたしが個人的にこの本に対して感じた不満点を一つ。
1つは、わたしは映画『A.I.』や『アンドリューNDR114』を観て以来「人間とロボットの違いは何なのか?」ということを考えてきたのですが、この本には納得できる答えがなかったことです。勿論映画は映画ですから、現実に肉の体を持っているロボットは当分作ることはできないでしょう。でもわたしはもし作れたら、ということを考えてしまいます。この本ではそういうロボットを作れたとしてもそれは人間とは違う思考をするだろうから全く違う生き物だと言えるだろう、というようなことが書いてあり・・・、わたしは「う〜ん、本当かな? もし人間の脳の仕組みを解明しその仕組みを肉の体を持つロボットに用いて、人間と同じ体を持ち、同じように思考ができるロボットができたら?」と思ってしまいました。心が脳にあり、脳を持っているものには心があると認められても、それは人間ではないのでしょうか? それは脳科学ではなく哲学などの方で考えなければいけないのでしょうか? 勿論、人工心臓は作ることはできても人工の脳を作るのはほぼ不可能だと思いますし、万一そんなロボットを作ったとしてもそれはもはや人間なので(とわたしは思います)他の人間の命令に逆らうだろうから、そんなロボットを作る意味がないでしょうけれど。う〜ん。
2つめは、この本に本文とは別に参考文献が記載されていないこと。本文中で、他の研究者の考えも用いて講義をした、と著者自身が仰っており、勿論その講義の部分ではどの研究者の考えなのかも書いているのですが、その研究者がその考えを何という本や文献に著したのかについてもしっかり明示し、できれば本文とは別に記載して欲しかったです。こういう科学系の研究は日々進歩すると同時に誤っていることもありますから、この本の内容をそのまま鵜呑みにして良いのか困ってしまいました。参考文献があるならその本や論文を、また、その本や論文について書いた本や論文を調べ、今現在その内容に誤りが見つかっているかいないか知ることができるので・・・。
とはいえ総合的に見ると、非常にわかりやすく脳について説明している良書です。良書でなければ批判は出てきませんもの。この著者の本はわたしも2冊所有していますが、どちらも一般人が知りたい内容をわかりやすく説明してくれています。著者の今後の本または論文にも期待。
慶応義塾ニューヨーク学院高等部の生徒に対して著者が行った講義内容をまとめたのがこの本。
読んでみてわかったのは、脳というものは未だに謎に包まれていて、その謎を解明するのは非常に難しいということ。それでも、いえ、だからこそ脳は面白い。前頭葉、側頭葉など脳には様々な部位がありますが、同じ脳というものであるにも関わらず役割がそれぞれ違うというのがとても不思議です。
特にアルツハイマー病についての章は、読んでいてドキドキしました。神経細胞を壊す(注:麻痺させるのではありません)βアミロイドを生み出すのはAPPという遺伝子。このAPPをプレセニリンというものが切り取る(おそらくこれは正常な脳でも少しずつ起こっている)。そのAPPの切れはしがβアミロイド。アルツハイマー病はプレセニリンがおかしくなってAPPを切りすぎてしまうために起こるのかもしれない。βアミロイドが溜まって神経細胞が壊されると脳に老人班ができる、・・・と。怖いです。
ここでわたしが個人的にこの本に対して感じた不満点を一つ。
1つは、わたしは映画『A.I.』や『アンドリューNDR114』を観て以来「人間とロボットの違いは何なのか?」ということを考えてきたのですが、この本には納得できる答えがなかったことです。勿論映画は映画ですから、現実に肉の体を持っているロボットは当分作ることはできないでしょう。でもわたしはもし作れたら、ということを考えてしまいます。この本ではそういうロボットを作れたとしてもそれは人間とは違う思考をするだろうから全く違う生き物だと言えるだろう、というようなことが書いてあり・・・、わたしは「う〜ん、本当かな? もし人間の脳の仕組みを解明しその仕組みを肉の体を持つロボットに用いて、人間と同じ体を持ち、同じように思考ができるロボットができたら?」と思ってしまいました。心が脳にあり、脳を持っているものには心があると認められても、それは人間ではないのでしょうか? それは脳科学ではなく哲学などの方で考えなければいけないのでしょうか? 勿論、人工心臓は作ることはできても人工の脳を作るのはほぼ不可能だと思いますし、万一そんなロボットを作ったとしてもそれはもはや人間なので(とわたしは思います)他の人間の命令に逆らうだろうから、そんなロボットを作る意味がないでしょうけれど。う〜ん。
2つめは、この本に本文とは別に参考文献が記載されていないこと。本文中で、他の研究者の考えも用いて講義をした、と著者自身が仰っており、勿論その講義の部分ではどの研究者の考えなのかも書いているのですが、その研究者がその考えを何という本や文献に著したのかについてもしっかり明示し、できれば本文とは別に記載して欲しかったです。こういう科学系の研究は日々進歩すると同時に誤っていることもありますから、この本の内容をそのまま鵜呑みにして良いのか困ってしまいました。参考文献があるならその本や論文を、また、その本や論文について書いた本や論文を調べ、今現在その内容に誤りが見つかっているかいないか知ることができるので・・・。
とはいえ総合的に見ると、非常にわかりやすく脳について説明している良書です。良書でなければ批判は出てきませんもの。この著者の本はわたしも2冊所有していますが、どちらも一般人が知りたい内容をわかりやすく説明してくれています。著者の今後の本または論文にも期待。
コメント