大和 和紀 『はいからさんが通る』
2007年5月17日 漫画
紅緒さんの破壊力に脱帽です。もしも紅緒さんが漫画のヒロインではなく現実世界にいる人だったなら、世界征服くらいできちゃう気がします。ある日無実の罪で牢獄に入れられた紅緒さんは特に気にせず御飯をもりもり食べて歯ぎしりしながらぐっすり眠って女囚のリーダーを寝込ませて、釈放される頃には勿論紅緒さんは元気いっぱい、女囚たちは寝不足と恐怖でげっそりしていたのです。1人の女性の周りを美少年や美青年が取り囲んでいる逆ハーレムものの作品は数あれど、こんなヒロイン紅緒さんしか知りません。紅緒さんの1つ歳下で幼なじみの美少年・蘭丸くんは、「どうして紅緒さんの周りはハンサムばっかりなんだろ。本人ははかいされているっていうのに」(細部不正確で申し訳ありません)と嘆きます。
おそらく良い男というものは紅緒さんの表面的なところ、例えば化粧っけがゼロだったり胸がペタンコだったり酒乱だったり喧嘩っぱやいところ(言い過ぎですね)だけではなく彼女の内面を見抜けるのでしょう。竹を割ったようにすかっとした性格。何事にも一所懸命で、細かいことは気にしない彼女には女性特有のねちっこさが無い。くじけそうな時も弱音を吐かず前向きで、いつも笑顔。米屋の打ち壊し現場に記者として取材に行ったのに、米屋を許せずに自分も打ち壊しに参加してしまう強い正義感。多少のことにはひるまない度胸。喧嘩は連戦連勝という腕っぷしでとっても健康的。それでいて姉御タイプではなく妹キャラで、華美ではないけれどいつもおしゃれな格好をしているし、誰かの人格を否定したりはしない心配りと、自分だって命が危ないのに子犬を助ける優しさと、自分の気持ちよりも恋敵の気持ちを優先してそっと身を引く思いやりと不器用さも持っている。けれど身を引いてもなお、一途にただ1人の男性を想い続けている紅緒さん。良い男が惚れぬはずはあるまいて。紅緒さんの伊集院忍少尉を想う時のモノローグを読んでいると切なくて胸がきゅんとします(「この漫画ってそういえば少女漫画だったんだ」とハッとしたりもします)。そして恋をしていても破壊力が全く衰えない紅緒さんにやっぱり脱帽。なぜだっ? けれどそれが紅緒さんらしさです。
1975年から連載された漫画なのに今読んでも面白いです。絵もきれ〜い! また、登場人物のほとんどが酒乱という面も持つ前衛的(?)少女漫画です。文庫版の最終巻では各主要登場人物の番外編漫画が載っていますよ。恋物語あり、友情物語あり。印念中佐は番外編でもやらかしてくれていますねー。好きですわ、あの人。悪役なのになんだか憎めない。
また、この漫画の舞台が大正時代でありこの漫画の物語が女性視点で展開する、というところにも是非注目していただきたいです。紅緒さんは女学校を出て職業婦人になります。この頃は職業婦人への偏見があって当たり前という時代で、この漫画のところどころに紅緒さんが性差別を受ける描写が出てきます。更にこの漫画では女性が仕事をするということへの偏見だけでなく、恋愛をはしたないもの・庶民以下がするものと捉える風潮も描かれています。紅緒さんの女友達・環(たまき)も紅緒さんとは違うタイプではあれど(美女! しかも心も美しい)同じくハイカラな精神の持ち主で、男性が女性を選ぶのではなくわたしたちが男性を選ぶのだという価値観のもと、見合い結婚を拒否し自由恋愛を楽しみます。しかし女学校の女教師は環を「思想かぶれ」と叱ります。そもそも女学校は職業婦人ではなく良妻賢母を育成するための学校ですから、そう思っている教師がいて当然なのです。その上、環は華族の女の子。環の親は、我が家から職業婦人を出すわけにはいかない、親が決めた相手との結婚でないと認めない、という考えを持っています。生活に困っているわけではないのに働きたいという気持ちがわからない。家の利益になる結婚ではなく自分の好きな相手と結婚したいという気持ちがわからない。女性は家にいて子どもを生み育て家長である父親或いは夫に従順たれという常識のあった時代。賢母は良くても賢妻はいけない、という考えのあった時代・・・。そういう時代を紅緒さんや環のような自立の精神を持った女性が変えてきたのだ・・・と勉強にもなる漫画ですよ。大正時代まだ差別されていた外国人とのハーフをヒーローに据えているあたりもハイカラですね。伊集院忍少尉は美形だから当然モテモテなのですが、保守的な女性なら「日本人の血統を汚しているわ」と好きにならなかったかもしれません(そもそも日本人だって色んな血が混ざっているというのに、今でもこういう考えの人いますよねー)。紅緒さんは彼の外見も中身も好きになりました。うーん、紅緒さん大好き。
おそらく良い男というものは紅緒さんの表面的なところ、例えば化粧っけがゼロだったり胸がペタンコだったり酒乱だったり喧嘩っぱやいところ(言い過ぎですね)だけではなく彼女の内面を見抜けるのでしょう。竹を割ったようにすかっとした性格。何事にも一所懸命で、細かいことは気にしない彼女には女性特有のねちっこさが無い。くじけそうな時も弱音を吐かず前向きで、いつも笑顔。米屋の打ち壊し現場に記者として取材に行ったのに、米屋を許せずに自分も打ち壊しに参加してしまう強い正義感。多少のことにはひるまない度胸。喧嘩は連戦連勝という腕っぷしでとっても健康的。それでいて姉御タイプではなく妹キャラで、華美ではないけれどいつもおしゃれな格好をしているし、誰かの人格を否定したりはしない心配りと、自分だって命が危ないのに子犬を助ける優しさと、自分の気持ちよりも恋敵の気持ちを優先してそっと身を引く思いやりと不器用さも持っている。けれど身を引いてもなお、一途にただ1人の男性を想い続けている紅緒さん。良い男が惚れぬはずはあるまいて。紅緒さんの伊集院忍少尉を想う時のモノローグを読んでいると切なくて胸がきゅんとします(「この漫画ってそういえば少女漫画だったんだ」とハッとしたりもします)。そして恋をしていても破壊力が全く衰えない紅緒さんにやっぱり脱帽。なぜだっ? けれどそれが紅緒さんらしさです。
1975年から連載された漫画なのに今読んでも面白いです。絵もきれ〜い! また、登場人物のほとんどが酒乱という面も持つ前衛的(?)少女漫画です。文庫版の最終巻では各主要登場人物の番外編漫画が載っていますよ。恋物語あり、友情物語あり。印念中佐は番外編でもやらかしてくれていますねー。好きですわ、あの人。悪役なのになんだか憎めない。
また、この漫画の舞台が大正時代でありこの漫画の物語が女性視点で展開する、というところにも是非注目していただきたいです。紅緒さんは女学校を出て職業婦人になります。この頃は職業婦人への偏見があって当たり前という時代で、この漫画のところどころに紅緒さんが性差別を受ける描写が出てきます。更にこの漫画では女性が仕事をするということへの偏見だけでなく、恋愛をはしたないもの・庶民以下がするものと捉える風潮も描かれています。紅緒さんの女友達・環(たまき)も紅緒さんとは違うタイプではあれど(美女! しかも心も美しい)同じくハイカラな精神の持ち主で、男性が女性を選ぶのではなくわたしたちが男性を選ぶのだという価値観のもと、見合い結婚を拒否し自由恋愛を楽しみます。しかし女学校の女教師は環を「思想かぶれ」と叱ります。そもそも女学校は職業婦人ではなく良妻賢母を育成するための学校ですから、そう思っている教師がいて当然なのです。その上、環は華族の女の子。環の親は、我が家から職業婦人を出すわけにはいかない、親が決めた相手との結婚でないと認めない、という考えを持っています。生活に困っているわけではないのに働きたいという気持ちがわからない。家の利益になる結婚ではなく自分の好きな相手と結婚したいという気持ちがわからない。女性は家にいて子どもを生み育て家長である父親或いは夫に従順たれという常識のあった時代。賢母は良くても賢妻はいけない、という考えのあった時代・・・。そういう時代を紅緒さんや環のような自立の精神を持った女性が変えてきたのだ・・・と勉強にもなる漫画ですよ。大正時代まだ差別されていた外国人とのハーフをヒーローに据えているあたりもハイカラですね。伊集院忍少尉は美形だから当然モテモテなのですが、保守的な女性なら「日本人の血統を汚しているわ」と好きにならなかったかもしれません(そもそも日本人だって色んな血が混ざっているというのに、今でもこういう考えの人いますよねー)。紅緒さんは彼の外見も中身も好きになりました。うーん、紅緒さん大好き。
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