冷めたロリータと純情なヤンキーのおはなし。
 原作は嶽本野ばらさん。
 本編が始まる前の画面にバーンと黄色い「和亜任愚」の文字が出てきました。ワーニング・・・ワーニングを当て字に? 暴走族が着る特攻服の刺繍風の書体で? 映画が始まる前のその注意事項は「どーぞなにゆえ、ご理解ください」とシメられてしまいました。はーい、ご理解致しました。
 これは絶対面白い映画だぞ、遊び心あるぞ、とわくわくしているうちに本編スタート。
 ふりふりのBABY,THE STARS SHINE BRIGHTのお洋服を着た深田恭子さん、可愛いっ。BABYのお洋服はレースとフリルと刺繍が満載の、乙女のためのお洋服。そのお洋服が似合うくるくるの金髪をしている女の子、それが深田恭子さん演じる竜ヶ崎桃子。好きな音楽はヨハン・シュトラウス。好きなイラストレーターは高橋真琴(ですよね?)。趣味は刺繍。腕力も握力もないし泳ぐこともできません。体育はいつも見学。ちょっとしたことですぐ気を失うところなんて、ロココ時代の貴婦人のよう? 彼女の楽しみは、茨城県下妻から東京代官山のBABYのお店までお洋服を買いに行くこと。BABYの真っ白な靴で牛さんの落とし物を踏んでしまい落とし物を取ろうと一生懸命地面に靴をこすり付けているところ、下唇をぷくっと出して困った表情をしているところ、イチコの名前を知って作り笑いではなく心からニマッと笑っているところ、竜二が白いエナメルの靴を履いていることに気づき口をあんぐり開けている表情・・・可愛いところを挙げだしたらきりがありません。けれど彼女は冷めたロリータ。可愛いのにどこか残酷な香り。「人は一人じゃ生きられないなんて、だったらわたしは人じゃなくていい」と桃子は言います。友達はいないし友達を必要ともしません。彼女は全てを客観視しているようです。
 長〜いスカートを穿きサングラスをかけ黒い口紅を塗り目を黒く濃く囲んだ土屋アンナさんは、純情なヤンキー・白百合イチコ役・・・でも本当はイチコじゃないんですよ(彼女の意思を酌んで「イチコ」と書き続けますね)。ばりばりに改造したバイク・・・ではなく原動機付き自転車でぱらりらぱらりらと御登場。ぶうんぶうんと砂埃をあげ、睨みを効かせ、ガムをくちゃくちゃ噛みながら気だるそうに歩みを進めるその姿。なんか格好いい!とわたしはうっかりキャーキャー言ってしまいました。「ならば桃子さんに、お引継ぎ、いただけますでしょうか」。・・・イチコ、日本語が不自由です。「〜コラァ!」「すっげえ」「〜ねえかよ!」。特攻服の背中には「御意見無様」の文字。・・・マジで無様っすアネゴっ・・・。髪の毛は金色と黒が混じっているいわゆるプリン状態で、所作もワイルド。白目もむきます。けれどイチコはとっても純情なのです。人なつっこいのです。熱いのです。はっきり言うと、転校生の女の子へ淡い恋心を抱いているガキ大将みたいなのです(わかりにくいたとえですねー)。自分と全然違うタイプの桃子に興味津々で、何かと桃子の家へ遊びに行っては自分の主義や夢について長々と語り、桃子に将来のことについてお説教をし、構ってもらえないとストローで飲み物に泡を立てたり桃子が音楽を聴いているのにヘッドフォンを取ったり自分の鼻の穴にタバコを入れて火をつけてみたりとちょっかいを出してばっかりで、頭突きやら蹴りやら暴力もふるいます。でもイチコの目はきらきらしています。パチンコ屋で尾崎豊の曲が流れてきたことにニヤリと笑い「負ける気がしねぇぜ☆」と挑んだのに惨敗してパチンコ台に倒れかかったところ、可愛かった。
 育った環境も主義も服装も全然違う2人ですが、やがては仲良くなっていきます。
 それはきっと、お互いがお互いの分身のような面を持っているから。
 桃子にも気性の激しい面があるし、イチコにも女の子らしいウブな面がある。人に誤解をされることを恐れていない。極端な服装(桃子いわく「人は見ためだもの」。服装は本人を表すんですよね)。自分自身に正直。でも桃子は「ねじまがってまーす」と本人が言う通りやっぱりどこかが極端に曲がっていて、イチコはまっすぐ。
 お互い同じ面がありつつも全然違うから惹かれ合うのだと思います。磁石のS極とM極みたいに。
 けれど、もしこの2人が同性同士ではなく異性だったとしても恋愛には発展しそうにない感じがします。イチコは桃子に惚れまくりかもしれませんが、桃子は一生恋愛に興味を示すことがないかもしれませんから。だってロリータなのですもの。
 

 以下は徒然なるままにつぶやきを書いていきます。
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 高橋真琴さんの本『ロリータの一生』、実際に出版されていたらいいのに(あれって高橋真琴さんのイラストですよね?)。
 桃子とパチンコ屋の店長と店員が偶然3人とも赤いチェック柄を着ていて、桃子だけがそれに気づいていたのには笑いました。桃子って、色んなことをよく見ているのですね。竜二の白いエナメルの靴にもすぐ気がついたし。
 この映画のナレーターは深田恭子さん。甘い声なのに淡々と話すのが素敵。
 竜二役の安倍サダヲさん、まさか1人2役をやっていたとは・・・。てっきり産婦人科医役は及川ミッチーかと。
 BABYの社長さんが本当に岡田義徳さんが演じてらっしゃるような方(小指を立ててる感じ)だったら面白いのに。でも実際の磯部社長はごく普通の方だそうですよ。虚構と現実とはちゃんと区別しなくっちゃあね。
 篠原涼子さん、せくしー!!
 わたしも希林樹木さん演じる桃子の祖母のように、誰かに「おめの道を行け」と言えるようになりたいです。こういうこと言ってくれる人、なかなかいないですもの。わたしも誰かに言って欲しいですし。
 あの八百屋さんどうなったのでしょ。野菜が結ぶ恋の行方は?
 それにしても「自分捨てなきゃ大人になれねぇんだったらアタイはガキのまんまでいいっすよ!」と啖呵を切った時のイチコ、格好良かったなあ。

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