神に救われなかった天使が人間によって救われる、悲痛だけれど心にじんわり沁みこんでくる曲です。羽根が舞う光景を思わせる音色が、とてもきれい。
 この曲に登場する天使は人間の世界に堕ちてしまっています。この天使がなぜ堕ちてしまったのかは、曲中で語られることはありません。神に天国を追われたのか、悪魔に羽根を傷つけられてしまったのか、それとも自ら天国を捨ててきたのか・・・? その答えはこの曲を聴く人次第です。
 わたしはこの天使が、天国に居た頃既に自由に飛ぶための翼を折られていて、それでも自分は飛べるのだと信じ天国を出てしまったのだと解釈しました。けれどこの天使はやはり飛ぶことはできず、真っ逆さまに堕ちていき・・・、堕ちていくにつれて翼の羽根がどんどん取れ、天使を導こうとする神の声も縛りつけようとする声すらも聴こえなくなりました。悔やんでももはや手遅れ。それでも、天使は堕ちていく間、神から解放された「自由」を感じ、もうすぐ自分が辿り着く人間の世界を思い描きました。きっとそこでは自分は幸せになれるだろう、と。けれど結果は・・・、天国も人間の世界も、天使にとって居心地の良い場所ではありませんでした。天使は人間ではないため当然人間の世界に順応することはできず、羽根もないので天国に帰ることも出来ません。天使はこのまま自分はずっと人間の世界で苦しみながら生きていく他ないのだ、と悲嘆に暮れました。この世界では何をしても自由だけれど、自分の居場所がない、自分には帰る場所もない、と。やがて天使は泣く力もなくしてしまいました。天使の周りにはたくさんの人間たちがいましたが、人間たちはそこにいるのが天使であると気づくことも、そこに苦しんでいる誰かがいるということにも気づかず、天使も人々に助けを求めようとはしないのです。悲鳴を上げないのは、天使にただ1つ残ったプライド。自分を受け入れてはくれない人々にすがりたくはない、と。
 天使は目を閉じ、自分が今いる世界を拒絶し、呼吸もできなくなりつつありました。このままでは天使は誰にも気づかれないまま死んでしまう・・・そんな時、1人の人間が現れます。その人は天使の前にまっすぐ歩いてきました。その人は天使の前で立ち止まり、天使へ手を伸ばします。天使にとっては思いがけないことでしたが、天使は心の底では「誰か助けて」と叫んでいましたから、天使の手は自然とその人の手に触れます。天使はあたたかさを感じました。人間の世界に来て初めて。いえ、天国でもこんなあたたかさを感じたことはなかったかもしれません。天使は泣きそうな顔で微笑み、目を開き、人間の世界を受け入れることを決意しました。人間としてこの世界に生きることはできないし、今の自分が誰かにすがらなければ生きられない存在だと知ったけれど、それでもこの世界で生きたいと思えるようになったから。
 ・・・勝手に物語を作ってしまって恐縮です。でもこの曲を聴く度にわたしはこの物語を思い浮かべるのです。曲の全体を通して、天使の感じている絶望や孤独が伝わってきて胸が苦しくなりますが、曲の最後にたまらない幸福を感じ胸が熱くなるのです。

 「たどり着くまでに失った光 呼び起こすのは神の声と 君の鼓動だけ」

 この歌詞が好きです。光は、希望。誰かの鼓動は、あたたかな光。

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 この曲はYOSHI原作によるTVドラマ『翼の折れた天使たち』のテーマソングでもあります。天使=若い女性、神=親(エピソードによってはここに恋人も該当)、手を伸ばしてくれる人=親以外の誰かであり、そして自分が手を伸ばさなければたとえ誰かが手を伸ばしてくれても自分は救われることはない、ということを感じさせます。このドラマの内容にぴったりというだけでなくドラマの内容を引き立たせていて、わたしは偶然このドラマにチャンネルを合わせたことでこの曲を知り、この曲を聴くためにこのドラマを見続けました。もう、一目惚れです。

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