脳損傷を負ってしまった子どもと生きる家族の気持ちを知ることが出来る本です。
 脳損傷は交通事故に遭う、暴力を受ける、高い熱を出す、など様々な原因で起こります。どうしても「自分の子どもには起こらない。他人事」と思いたいものですが、起こる時は起きてしまうのです。「子どもの脳損傷とは一体どのようなものなのか?」「同じように脳損傷を負った子どもを持つ他の家族は、どのように考えどのようなことをしているのか?」「無理に前向きになりたくない。後ろ向きにはなりたくないけれど、今すぐには前向きになれない。ゆっくり前向きになれるような本を読みたい」という家族に読んでいただければな・・・と、わたしはこの本を読んでいて思いました。
 この本にはかなりのページを割いて、低酸素性脳症後遺症になった男の子の事例とその子の母親の気持ちが書かれています。その子はプールで泳いだ後嘔吐し意識を失い心肺停止し、脳損傷を負ってしまったそうです。けれど原因はあくまでも不明。なぜ我が子が? と問うても答えられる人はいません。母親にはその子の元気だった姿がはっきりと思い出せるのに、突然の出来事でその子は以前と違ってしまっています。母親は、朝目が覚めたら我が子が元に戻っていますように、と願いました。けれど残念ながら元に戻ったりはしません。母親は苦しみます。母親は苦しみながらも少しずつ、我が子が少しでも回復するにはどうしたら良いのか、ということを考えたり行動したり出来るようになっていきました。母親は、『多くの人に(子どもが脳損傷を負ったことを)受容できたのね」と言われて辛かった』(P61)といいます。以下、P62の内容を要約して御紹介します。・・・我が子の状況を客観的に見たり、子どもを回復させるために考えたり行動したり出来るようになることを「受容」と言うならば自分たちは「受容」できたことになるだろう。けれど我が子が障害を負ってしまったことについては多分一生受け入れられないと思う。それよりも今どう生きていくか、日々をどう過ごすかの方が大切な気がする。・・・とも母親は言います。この、ショック→否認→悲しみと怒り→適応→再起の流れ。脳損傷の子どもを持つ御家族にも参考になるのではないでしょうか・・・。
 他にも発熱後原因不明の急性脳症になった男の子の事例、交通事故で脳外傷を受けた男の子の事例を読むことができます。また、アトムの会(脳損傷を負った子どもと家族のための会)が家族に行ったアンケートの結果もP108から読むことができます。このアンケート結果には、家族の日常生活の悩みや工夫などが挙げられており、わたしは特にP117の「(家族の)心のケアをする職種が欲しい。ボランティアでなく」という意見が胸に残りました。確かに現在、日本には課題を抱えている本人を支援する職種は多いにも関わらず、その家族を支援する職種は非常に少ないのですよね・・・。日本も家族支援に力を入れるべきだ、と強く感じます。

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