犬童 一心監督 『ジョゼと虎と魚たち』
2008年5月21日 映画
ジョゼは人魚姫の物語を知っているでしょうか。
わたしはジョゼと恒夫(つねお)くんに人魚姫の物語を重ね合わせました。この映画を見終わって、わたしは「もしも人魚姫が歩くことの出来る脚を持たず、代わりに声を持っていたとしても、王子様とは結ばれなかったかもしれない・・・」と思いました。
ジョゼは日本人です。ジョゼは歩けません。ジョゼは20歳前後くらいの女性ですが、乳母車に乗って外へ出ます。ジョゼはおばあさんと二人暮らしです。ジョゼはおばあさんに「こわれもの」と呼ばれます。ジョゼはおばあさんに、近所の人に見つからないようにしろと言われます。ジョゼは乳母車で散歩する時以外はずっと家にいます。ジョゼは学校へ行ったことがありません。ジョゼはおばあさんがゴミ置き場から拾ってきてくれる本を読んで勉強しています。ジョゼの戸籍上の名前はくみ子です。でもジョゼは自分の名前はジョゼだと言います。ジョゼはフランソワーズ・サガンの本に登場するジョゼという女性の恋物語が好きなようです。ジョゼは恒夫くんに出逢いました。恒夫くんはジョゼを、くみ子ではなくジョゼと呼んでくれます。ジョゼと恒夫くんは恋人になりました。ジョゼは恒夫くんに背負われて外へ出るようになりました。ジョゼと恒夫くんは婚約するかもしれないところまでいきました。けれどいつしか別れてしまいました。
理由はいろいろ。
若い恒夫くんにとってジョゼの存在が重たくなったのかもしれません。ある日、恒夫くんは両親にジョゼを紹介するため、ジョゼを助手席に乗せ、長距離ドライブをしました。運転後ジョゼを背負いながら、恒夫くんはジョゼに「ねえ、車椅子買おうよ」と言いました。けれどジョゼは「いやや」と言いました。ジョゼは恒夫くんと離れたくなかったのでしょう。けれど長距離運転で疲れている恒夫くんには、ジョゼの体重以上の重さが感じられたかもしれません。恒夫くんはその重さを感じる自分を嫌悪したのかもしれません。
そんな恒夫くんの気持ちを、ジョゼは敏感に感じ取ったようです。ジョゼは別れを予感していたのでしょう、海底を模したラブホテルのベッドの上で、眠っている恒夫くんにこう呟きました。「いつかあんたがおらんようんなったら、迷子の貝殻みたいに、(わたしは)ひとりぼっちで海の底をころころころころ転がり続けることになるんやろう。・・・でもまあ、それもまた良しや」と。そしてジョゼはあっさりと恒夫くんと別れました。
ジョゼの身の引き方はまるで、「王子様に生きていてほしい」と言って泡になっていった人魚姫のようです。恒夫くんは前の彼女とよりを戻したのか、ラストシーンでは前の彼女と並んで歩いています。
けれどジョゼはジョゼ。ジョゼは人魚姫ではありません。恒夫くんも恒夫くん。恒夫くんは王子様とは違います。
ラストシーンで、恒夫くんはジョゼを思い出して泣き出します。ジョゼは恒夫くんと離れて、寂しそうな、でもどこか満ち足りたような表情をしています。
わたしは恒夫くんの涙とジョゼの表情に、初めて『人魚姫』を読んだ時のどうしようもない気持ちを軽くしてもらえた気がしました。
わたしはジョゼと恒夫(つねお)くんに人魚姫の物語を重ね合わせました。この映画を見終わって、わたしは「もしも人魚姫が歩くことの出来る脚を持たず、代わりに声を持っていたとしても、王子様とは結ばれなかったかもしれない・・・」と思いました。
ジョゼは日本人です。ジョゼは歩けません。ジョゼは20歳前後くらいの女性ですが、乳母車に乗って外へ出ます。ジョゼはおばあさんと二人暮らしです。ジョゼはおばあさんに「こわれもの」と呼ばれます。ジョゼはおばあさんに、近所の人に見つからないようにしろと言われます。ジョゼは乳母車で散歩する時以外はずっと家にいます。ジョゼは学校へ行ったことがありません。ジョゼはおばあさんがゴミ置き場から拾ってきてくれる本を読んで勉強しています。ジョゼの戸籍上の名前はくみ子です。でもジョゼは自分の名前はジョゼだと言います。ジョゼはフランソワーズ・サガンの本に登場するジョゼという女性の恋物語が好きなようです。ジョゼは恒夫くんに出逢いました。恒夫くんはジョゼを、くみ子ではなくジョゼと呼んでくれます。ジョゼと恒夫くんは恋人になりました。ジョゼは恒夫くんに背負われて外へ出るようになりました。ジョゼと恒夫くんは婚約するかもしれないところまでいきました。けれどいつしか別れてしまいました。
理由はいろいろ。
若い恒夫くんにとってジョゼの存在が重たくなったのかもしれません。ある日、恒夫くんは両親にジョゼを紹介するため、ジョゼを助手席に乗せ、長距離ドライブをしました。運転後ジョゼを背負いながら、恒夫くんはジョゼに「ねえ、車椅子買おうよ」と言いました。けれどジョゼは「いやや」と言いました。ジョゼは恒夫くんと離れたくなかったのでしょう。けれど長距離運転で疲れている恒夫くんには、ジョゼの体重以上の重さが感じられたかもしれません。恒夫くんはその重さを感じる自分を嫌悪したのかもしれません。
そんな恒夫くんの気持ちを、ジョゼは敏感に感じ取ったようです。ジョゼは別れを予感していたのでしょう、海底を模したラブホテルのベッドの上で、眠っている恒夫くんにこう呟きました。「いつかあんたがおらんようんなったら、迷子の貝殻みたいに、(わたしは)ひとりぼっちで海の底をころころころころ転がり続けることになるんやろう。・・・でもまあ、それもまた良しや」と。そしてジョゼはあっさりと恒夫くんと別れました。
ジョゼの身の引き方はまるで、「王子様に生きていてほしい」と言って泡になっていった人魚姫のようです。恒夫くんは前の彼女とよりを戻したのか、ラストシーンでは前の彼女と並んで歩いています。
けれどジョゼはジョゼ。ジョゼは人魚姫ではありません。恒夫くんも恒夫くん。恒夫くんは王子様とは違います。
ラストシーンで、恒夫くんはジョゼを思い出して泣き出します。ジョゼは恒夫くんと離れて、寂しそうな、でもどこか満ち足りたような表情をしています。
わたしは恒夫くんの涙とジョゼの表情に、初めて『人魚姫』を読んだ時のどうしようもない気持ちを軽くしてもらえた気がしました。
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