吉岡利恵 『ピンクな老後』
2008年6月23日 おすすめの本一覧 この本の第1章には紅を差してから外出する84歳の女性が登場。第2章には庭の梅の木が咲くのを楽しみにしている男性(80歳台くらい?)が登場します。
どちらもピンク色に関係した老後ですね(男性の庭の梅の木は紅いようなので、厳密にはピンクと言えないかもしれませんが)。この2人はホームヘルパーである著者が実際に出逢った利用者のようです。2人はそれぞれ一人暮らしのようですが、自分なりに生活を楽しんでいる様子。著者独自の「テープ版画」で描かれるこの2人は、皺があるせいなのか・・・何だかとても表情が豊か。
それに対して、この2人と向き合う著者自身と思しき若い女性の表情は硬いです。この若い女性は1人目の女性に対して、この人の生き方いいなあ、と思っています。2人目の男性に対しては、梅が咲くのを待つ以外には特に何かするわけでない男性に歯がゆさを感じ、歯がゆく思う自分を恥じているようです。
この若い女性は第3章では1人で登場します。ほとんど無表情で。この若い女性は何故かはわかりませんが毛虫駆除をしつつ、自分の老後について考えています。庭の手入れはホームヘルパーの業務ではないので、この女性は自宅の庭の手入れをしているのかもしれません。
自分が歳を取って一人暮らしをしたらどんなことを思うだろうか。
気楽だと思うか。
家事は大変か。
さみしいと思うか。
あの2人のように自分なりに楽しめることを見つけられるか。
何もすることがないのではないか。
寝たきりになったかどうしようか・・・。
そして第3章は、この若い女性の後ろ姿しか見えない画と「今からそんなことを考えたって仕方ないけど、でもね、そのとき私はどうなんだろう」という文章とで締めくくられます。
――――――――
<備考>
わたしはこの若い女性の後ろ姿を好ましく思いました。この若い女性が今どんな表情をしているかわからないことによって、この本を読んでいる読者も自分の老後がどうなるかわからないということに気づかされるように思います。
わたしはこうも思いました。この女性は未来のことについて色々悩んでいるからこそ、感情を表情に出す暇がないのかもしれない・・・と。そうだとしたら、第1章の女性と第2章の男性との巧い対比が出来ているなあと思います。
著者の画についてわたしが特に気に入ったところは、第1章に登場する女性の顔と腕の色と足の色とを変えているところ。文章を読まなくても画を見ただけで、この女性がストッキングを履いているということがわかります。これにより、この女性は自分の肌の色より明るい色のストッキングが好みなのかもしれないなあ、と想像する楽しみが生まれました。著者の細かな美意識を感じます。
どちらもピンク色に関係した老後ですね(男性の庭の梅の木は紅いようなので、厳密にはピンクと言えないかもしれませんが)。この2人はホームヘルパーである著者が実際に出逢った利用者のようです。2人はそれぞれ一人暮らしのようですが、自分なりに生活を楽しんでいる様子。著者独自の「テープ版画」で描かれるこの2人は、皺があるせいなのか・・・何だかとても表情が豊か。
それに対して、この2人と向き合う著者自身と思しき若い女性の表情は硬いです。この若い女性は1人目の女性に対して、この人の生き方いいなあ、と思っています。2人目の男性に対しては、梅が咲くのを待つ以外には特に何かするわけでない男性に歯がゆさを感じ、歯がゆく思う自分を恥じているようです。
この若い女性は第3章では1人で登場します。ほとんど無表情で。この若い女性は何故かはわかりませんが毛虫駆除をしつつ、自分の老後について考えています。庭の手入れはホームヘルパーの業務ではないので、この女性は自宅の庭の手入れをしているのかもしれません。
自分が歳を取って一人暮らしをしたらどんなことを思うだろうか。
気楽だと思うか。
家事は大変か。
さみしいと思うか。
あの2人のように自分なりに楽しめることを見つけられるか。
何もすることがないのではないか。
寝たきりになったかどうしようか・・・。
そして第3章は、この若い女性の後ろ姿しか見えない画と「今からそんなことを考えたって仕方ないけど、でもね、そのとき私はどうなんだろう」という文章とで締めくくられます。
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<備考>
わたしはこの若い女性の後ろ姿を好ましく思いました。この若い女性が今どんな表情をしているかわからないことによって、この本を読んでいる読者も自分の老後がどうなるかわからないということに気づかされるように思います。
わたしはこうも思いました。この女性は未来のことについて色々悩んでいるからこそ、感情を表情に出す暇がないのかもしれない・・・と。そうだとしたら、第1章の女性と第2章の男性との巧い対比が出来ているなあと思います。
著者の画についてわたしが特に気に入ったところは、第1章に登場する女性の顔と腕の色と足の色とを変えているところ。文章を読まなくても画を見ただけで、この女性がストッキングを履いているということがわかります。これにより、この女性は自分の肌の色より明るい色のストッキングが好みなのかもしれないなあ、と想像する楽しみが生まれました。著者の細かな美意識を感じます。
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