「椅子は単に座るためのもの」というイメージを変えてくれる本です。

 椅子はその椅子が置かれている空間や、椅子の形によって、それぞれ置かれている意味が違う・・・。そう想像する楽しみをくれます。
 休むために置かれているものもあれば、ただ物思いに耽るために置かれているものもあり、空間の豊さを表現するために置かれているものもあり・・・、空間の自由度を上げるために置かれているものもあるようです。

 旅先で椅子を探したくなります。

 特にわたしは94ページから取り上げられる、河井寛次郎記念館の椅子に興味を持ちました。わたしは以前河井寛次郎記念館に行ったことがあり、その際「鞍型スツール」を含む椅子たちを見ることが出来ました。しかしその際は「おや? よく見ると椅子がある」と思っただけ。座ろうともしませんでした。今思えば、あの空間において椅子は「ここに椅子がありますよ」と主張せず、その場に溶け込む心地よいものとして存在していたように思います。
 ああ。また行きたいです、河井寛次郎記念館。そして椅子をもっと意識したい・・・。とはいえ、あの空間において余り椅子を意識できない、ということは椅子を置いた人の意図にぴったり当てはまるのかもしれません。疲れた人が「椅子はないだろうか」と探すとそこに椅子が見つかる。けれど疲れていない人は特に意識しない。さっぱりしていて素敵です。

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