『「下弦の月~ラスト・クォーター」サウンドトラック』収録曲。



 この旋律は、つがいを亡くした鳥を想わせます。


 つがいを失くした鳥の衰弱を止めることは誰にも出来ません。
 「寂しい。寂しい。悲しい。逢いたい」。
 その鳥は、つがいを想って歌を歌います。
 だから、その鳥の歌はとても悲しいけれど美しいのです。
 けれど他のあらゆる生き物がどんなにその歌を褒めそやそうと、その鳥自身は決して満たされることはありません。
 つがいがその歌を聴いてくれないから。
 その鳥はみるみる弱っていき、やがてその歌は止まってしまいます。


 『下弦の月』のアダムは、まるでその鳥のよう。


 アダムは、さやかという女性を心から愛していました。
 アダムはミュージシャン。さやかはピアニストの卵。
 アダムはさやかに弾いてもらうために、美しい曲を書きました。
 それが『The Cape of storms』(原作では『Last Quarter』)。
 けれどさやかは、この曲を弾く前に病死してしまいました。
 さやかを亡くしたアダムは麻薬漬けになり、さやかの後を追うようにこの世を去りました。



 けれどアダムは鳥ではなく人間。


 自らの意思で命を手放したアダムに待っていたのは、死んでもさやかと会うことは出来ず、さやかと共に生まれ変わることも出来ない無情の世界。


 わたしにはアダムの孤独感が、この『The Cape Of Storms - Piano Ver. -』に織り込まれているような気がします。
 さやかに弾いてもらうために書いた曲をさやかが弾いてくれている・・・、無情の世界に在るアダムがそんな想像をして微笑んでいる気がして。 

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