わたしはこの映画に感謝しています。
 ルイ16世を好きになれたから。


 いい人そうではあるけれどいい男ではない。
 それが今までのわたしのルイ16世に対するイメージ。


 いい人そうではあるけれどいい男ではない、それはこの映画の中でも同じ。
 パッと見、冴えないです。(俳優さんごめんなさい)
 ルイ16世と初めて会った時、マリーは落胆の表情を浮かべているように見えます。
 ルイ16世は結婚初夜も含めそれ以降もずっと、マリーに手を出しませんでした。
 当然マリーは妊娠できません。
 マリーはただでさえ故国オーストリアの敵国フランスに独りぼっちであり、王太子妃の義務として子を産まなければならない重責があるというのに、ルイ16世がその気にならないのですからどうしようもありません。
 人々はマリーのことを「不妊症」と噂します。そもそも一度の結びつきさえないというのに。
 その噂はマリーの耳にも入りました。もしかしたらマリーは、自分には女としての魅力が無いのではないか・・・だからこんなことになってしまったのではないか・・・と考えたこともあるかもしれません。当時における14、15歳の花嫁にとってとても辛い想像です。お付きの者の「子を産めない王妃は婚姻を解消されることもある」という言葉も、母からの「あなたの新しい家庭での本質的問題はあなたが夫の性的情熱を刺激できずにいることです。あなたほど魅力に溢れる女性にとってあるまじき事態です」という手紙も、マリーを追い詰めました。マリーははけぐちを求めて買い物や夜会に没頭。
 それでもルイ16世は毎晩マリーとベッドの中で眠るだけ・・・。


 と、ここまでは他の映像作品でも描かれます。しかしこの映画はルイ16世を好きにさせてくれます。


 この映画の中で、マリーと仲良さそうではあるのにマリーに手を出そうとすらしないルイ16世は、なぜかベッドの中に錠前を持ち込み、錠前をジッと見つめているのです。ルイ16世の趣味は狩りと錠前作り。いくら趣味だからって、なぜベッドの中に錠前を持ち込むの? 答えは後々明らかになります。
 この映画の中で、ルイ16世は「素晴らしいものに対して拍手をするのは当たり前」というマリーの素直さに惚れたように見えます。ルイ16世は自分がマリーに課してしまった悲しみを取り除きたいと決心し、ついにマリーの上に乗ります。わたしはこのシーンを見て拍手しました!(←自宅で見たので・・・) マリーの上にはルイ16世。ルイ16世の下には笑顔のマリー。「やった! もうすぐご懐妊の場面が見られるぞ~っ」と・・・思い・・・きや・・・アレ? ルイ16世はマリーの上からおりてしまいました!! ルイ16世はマリーに謝りました。
 それから大分経ってから、ようやくマリーの兄ヨーゼフ2世が登場。もっと早く登場してくださいましお兄様、と思ったのはわたしですがマリーも思ったかもしれません。ヨーゼフ2世の助言により、ルイ16世の誰にも言えなかった悩みは軽やかに解決。ルイ16世はゲイではありませんでした、真性・・・だったのです(何なのかわからない人はネットか親に聞きましょう)。マリーの上に一度乗った時は、成し遂げようと決意していたものの激痛に耐えられなかったのかもしれませんね。ルイ16世はこの悩みについて何度か医師に相談したようですが、医師としてはやんごとなき御方であらせられるルイ16世が真性・・・だとは診断し辛かったのでしょう。当時のフランスでは今のように真性・・・の手術は確立されていなかったようですし。この映画では描かれませんが、文献によるとヨーゼフ2世が手術という手があると教えたらしいです。
 その後・・・。ベッドへ向かうルイ16世の足取りがいつもと違うようです。背中がまっすぐ。勝負に挑む感じです。お! なんか男らしくベッドに入りましたよ。再び、マリーの上にはルイ16世。ルイ16世の下には笑顔のマリー。「頑張れ~!」わたしはテレビの画面前に寄って声援を送りました。嗚呼、映画のベッドシーンを応援するなんて生まれて初めてです。ルイ16世はマリーにチュッ、チュッ、チュッとキス。マリーも幸せそう。テレビの画面を見つめるわたしはニヤニヤしました。嗚呼、ルイ16世も悩んでいたんだ、マリーとずっとこうしたかったんだ、と思うと・・・おや? おかしいな。映画のベッドシーンを見て涙ぐむなど前代未聞っ。
 マリーは懐妊。良かったね良かったね・・・! 出産の際、出産を見守る人が部屋の中に大勢いることもあって、マリーは酸欠で気を失いそうになりました。素早く部屋の窓を開けたのはルイ16世。他の誰も窓を開けようとしなかったというのに、王自ら。窓を開けた後、ルイ16世はマリーの手を両手で優しく握り、マリーの手にキスをしました。「嗚呼、いい人そうだけどいい男じゃないなんて言って悪かったよ。あんたいい男だよ!」とわたしはこのシーンをジ~ンとしながら見ました。
 子どもが生まれてからはマリーの浪費も治まり、夫婦は仲睦ましくなりました。マリーとフェルゼンが秘めた恋をしたとはいえ、今までと比べて大きな進歩です。ルイ16世は、マリーがプチトリアンで披露する下手なお芝居にも、王自らいち早く立ち上がって拍手。これでめでたしめでたし・・・となれば良かったのですがフランス革命が起こるんですよね・・・。(><)



 わたしの乏しい文章力では上手く書けなかったのですが、わたしはこの映画を見てルイ16世を好きになりました。体での結びつきは遅かったし、心での結びつきもマリーにとってはわかりにくいものだったけれど、ルイ16世のマリーへの優しさが随所に表れていて。
 この映画のコンセプトは「マリー・アントワネットを身近に感じて欲しい」だと思うのですが、ルイ16世についても身近に感じることが出来たと思います。子どもが出来ずに悩んでいるカップルは今もたくさんいますしね。



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 <余談>
 ランバル公妃役は、『ミネハハ 秘密の森の少女たち』(以前わたしが書いたレビューはこちら→http://20756.diarynote.jp/200805241312230000/)でヒダラ役をやったメアリー・ナイさんなんですね。
 彼女はあの映画の中で、いくらそういう役だとしても悲惨な目に遭っていたので、正直わたしは心配していました。映画を嫌いになりはしないだろうか、と。
 けれどミネハハの後『マリー・アントワネット』にも出演なさっていることを知り、安心しました。ランバル公妃はとかく孤独になりがちなマリーを優しく支えてくれる役ですよね。ぴったりだと思いました。今後も応援していきたいです。
 

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