*注*
 詳しいあらすじを紹介しています。
 ネタバレがあるので御注意を。


 にゃんこ至上主義のわたしとしては、むしろ鈴子が刑事告訴される世をこそ憂うべきだと思うのです。
 鈴子の同居人は、ちっちゃくてちっちゃくてミュウミュウ鳴いている子猫を捨てて、子猫を死に至らしめたのですから。
 ところが、鈴子が仕返しとして同居人の持ち物を捨ててしまったがために、鈴子は拘置所送りにされてしまいます。子猫の命とニンテンドーDS Liteとどっちが大事なんだ! けしからん。


 不本意にも前科持ちとなってしまった鈴子は、元々実家暮らしだったのですが、近所の人から「~さんちの鈴子ちゃんは~」と噂話の格好のネタにされ、家族関係も何だかぎくしゃくしてしまったので、実家を出ることに決めました。新しく部屋を借りるには敷金・礼金・交通費、新しい仕事が見つかるまでの生活費として沢山お金がかかるので、百万円貯めてから家を出ることにしました。
 それが全ての始まりでした。まず、誰も自分のことを知らない土地へ行って、新しく部屋を借りて、それからバイトを探して、百万円貯まったらまた別の土地へ行く…という生活を、鈴子は繰り返すようになったのです。
 心を閉ざして。


 引っ越しを繰り返す中で、鈴子は中島くんと出会いました。中島くんはホームセンターの花コーナーでアルバイトをしている大学生です。勤務態度はとても真面目で、植物のことにとても詳しいです。中島くんはアパートのベランダでネギを育てています。…素晴らしい!
 中島くんに出会って初めて、鈴子は新たな土地で出会った全くの他人に、自分の前科のこと、今まで百万円貯めては引っ越してきたことを打ち明けました。
 中島くんは「けいじこくそ!?」と衝撃を受けますが、動揺しながらも鈴子に告白します。鈴子も告白します、中島くんのことが好き、と。二人は恋人になりました。
 ドキドキしながら手をつないで。部屋に行って。夕飯の話をして。一緒に眠って。
 本当に本当に幸せそう。


 けれど。
 中島くんはアホです。馬鹿です。大馬鹿者です。
 付き合い出してからしばらくして…、中島くんは鈴子に言ったのです。
 「お金貸して」と…。


 それから鈴子は中島くんにお金を貸し続けました。
 中島くんが他の女の子とお茶をしているのを見ても、ただ悲しく微笑んで、お金を渡し続けました。
 外食する時も、どんな時も、毎回毎回鈴子がお金を出し続けました。


 鈴子は、震えるようにしながら聞きました。
 「なんでわたしが他の女の子とデートするお金を出さなきゃいけないの?」と。
 中島くんは黙っていました。
 鈴子は百万円貯まってもいないのに、引っ越していきました。また新たな土地へ。


 …中島くんは馬鹿です。馬鹿で馬鹿でどうしようもなく若いです。
 中島くんは「百万円貯まったら彼女はいなくなってしまう」と不安に駆られて、「お金さえ貯まらなければいいんだ!」と、わざとお金を借りたり使わせていたのです。
 …君がちゃんと彼女を包みこんであげれば、百万円貯まったって二百万円貯まったって、彼女はいなくなったりしないのに。自信持ってよ中島くん。


 鈴子がいなくなって初めて中島くんは気付くことが出来ました。自分のしでかしたことの愚かさに。
 中島くんは走りました。汗びっしょりになって、転げるようにして鈴子を追いかけました。
 そして鈴子を見つけ、目が合いました。


 鈴子は中島くんが自分を追いかけてくるかどうか一瞬考えて、「…来るわけないか」ととても綺麗に笑って歩き出します。
 そこでこの映画はおしまい。


 走れ!! 中島くん!! 抱き締めるんだ!!

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