東日本大震災における復元ボランティアで有名な、復元納棺師さんの本。
 
 彼女自身もご家族も被災しているにも関わらず、睡眠時間を極限まで削って、ひたすら安置所を回って下さったのだそうです。
 津波、震災からきた火災…、亡くなった方たちの死因は様々。
 日が進めば進むほど遺体の状態は悪くなるばかりなのに、藻や砂やウジ虫を取り除いたり、瓦礫で負った傷を修復したり、遺体をマッサージしたりお化粧したりを繰り返しながら、300人以上もの方を、在りし日の姿に復元し続けて下さったのだそうです。
 しかも、遺族の想いにも寄り添って下さった。
 彼女自身も被災者なのですから、辛かったでしょうに…。

 せっかく苦労して復元しても、火葬されてしまえば骨しか残りません。
 けれど、遺族にとっては、いえ、故人にとっても、ちゃんとお別れするために、復元は必要なのです。
 直視出来ないほど腐敗或いは損傷を受けた遺体を前にしても、遺族は死を受け入れがたいのです。
 遺体にかつてのおもかげが蘇れば、その方が亡くなったのだという、受け入れたくない、でもいずれは受け入れなければならない現実を、自分なりに受け止められるのです。

 この本の前半には、震災以前に行ってきた納棺のエピソードも紹介されています。
 どのエピソードも、遺族が死を悼み、故人へ感謝しているものばかり。
 それらが、女性らしい優しい視点で描かれています。

 そしてこの本の後半には、東日本大震災で復元ボランティアをした日々が綴られています。
 そのエピソードの全てが、悲しいとか、辛いとか、切ないといった言葉では言い表せないものばかり。
 多分、言葉で言い表してはいけないんだと思います。
 中でも、身元不明者の遺体を復元してあげられなかった、と自らを責める著者の気持ちが…、読んでいて胸に重く迫りました。
 身元不明者の遺体に触れてはいけないという法律ゆえに、技術もあるし道具も揃っているのに、目の前に居る故人を、元の姿に戻してあげられなかった、と…。
 そして、身元不明の子どもの遺体の横に、やはり身元不明のおばあさんの遺体が居るのに気づいて、「おばあちゃん、ごめんなさいね。となりにね、小さなお子さんが一人でいるの。あの世に旅立つときは、一緒に手をつないで行ってあげてもらえませんか」(P208から抜粋)と手を合わせたというエピソードには…、例えようのない気持ちになりました。

 この本は、どんなに我慢しようとしても、ページを捲る度に涙が溢れてきます。
 この本は、命とは? 死とは? を考えるきっかけになったと共に、自分も何か復興のお手伝いがしたいという気持ちを強くしてくれました。

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