麒麟がどう生まれてどう育ってどう王を選ぶのかが、この巻には書かれています。
 この十二国記の世界が、この巻のおかげで、少しずつですが理解出来てきました。
 泰麒が景麒から折伏(しゃくぶく)の仕方を教えてもらう場面においては、「名前」は繋いでくれるうえ守ってくれる鎖であるという考え方や(これって元々はどこの国が起源の考え方でしたっけ?)、易や遁甲や風水や気功といった中国の考え方や、日本の密教の九字呪言の考え方などもミックスされています。
 十二国記独自の世界観にそれらが加わることで、なんとも不思議な世界観に仕上がっています。

 泰麒の愛らしさは勿論のこと、泰麒の乳母兼指令である汕子(さんし)にわたしは心を打たれました。
 この十二国記の世界において、子どもは母親の体からではなく、枝になった実から生まれるものですが、それでも汕子にとって、泰麒は我が子そのもの。
 突然襲ってきた蝕のせいで泰麒を失った際の汕子の悲痛な叫びは、まるで、お腹の子を失った母親のそれを思わせます。
 だからこそ、汕子が泰麒と再会するくだりでは、読んでいて涙が出るほど嬉しかったです。
 その後の、汕子が泰麒を慈しんで育てるくだりもまた然り。
 読み進めれば読み進めるほど、わたしまで、我が子の成長を見守る母親のような気分になりました。

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