小野不由美『風の万里 黎明の空〈上〉十二国記』
2013年6月14日 おすすめの本一覧
清秀という、この上巻にしか登場しない、…と言うよりもう登場したくても出来ない少年の台詞が、この上巻のテーマのような気がします。
清秀は言います。
「誰かが誰かより辛いなんて、うそだ。誰だって同じくらい辛いんだ」(P233より抜粋)と。
この上巻では、それぞれ立場の違う3人の少女が登場します。
1人目は、度重なる苦難を乗り越えて王となり、けれどどう政を行えば良いかわからず葛藤、そして国について学ぼうと努力する。
2人目は、今まで住んでいたところとは全く違う世界に流されて、言葉もわからず孤独に苛まれ、なんとか職を得て必死に働くけれど、雇い主の無理難題に耐えかね、自分の身の上を哀れむ日々の中で、きっと自分の不幸を理解してくれるであろう1人目の少女によって救ってもらうシンデレラストーリーを頭の中で描いて現実逃避し、やがて雇い主のもとから脱出、けれど親切にしてくれた別の人の真意を知ろうとせず「あなたにはわからない」とかえって我が身を哀れみ、1人目に会えることを夢見て旅立ち、…やがて清秀と出逢う。
3人目は、王を諫めることの出来る地位にあったにも関わらず、王が定めた過酷な法律によって罪無き国民が大勢殺されていることを知ろうとさえせず、ついに叛乱が起きると叛乱を起こした者のことを「簒奪者」と恨み、己の無知を責められれば「わたくしは何も知らなかった」と開き直り、更には、1人目の少女の噂を聞いて、1人目の少女とは会ったこともないばかりかそもそも住んでいる国自体が違うというのに「わたしがこんな暮らしをしているのに。許せない」と逆恨みし、身柄を引き受けてくれた人の財産を盗んで逃走し、1人目の少女から王位を奪おうと企む始末。
…2人目は清秀と出逢ったことで大事なことに気づくことができた。…その代償は余りに大きかったけれど。…それでも気づくことが出来た。清秀の言葉の意味に。
3人目は楽俊(『月の影 影の海』の下巻に登場した心優しき人物)と出逢ったことで、楽俊に八つ当たりしながらも、楽俊のおかげで大事なことにようやく気づくことが出来た。国のこと、国民のことを思うことの大切さに。
自分の不幸に酔ってしまっているうちは、他の人と助け合うことなんて出来ないのです。
でももしそれに気づけたら、それから生き方を変えればいいのです。
気づくのが遅すぎた、と反省したら、そこからはただ進むだけ。
…と言ってくれているような気がする一冊です、この上巻は。
この3人の少女が今後どうなるのか気になるので、わたしは早速、続きにあたる下巻を読もうと思います。
が、清秀が迎えた最期を思うと…、なんだか下巻を開くのを躊躇してしまいます。
すぐには下巻を開けそうにありません。
清秀は小説の登場人物の1人に過ぎない、とわかってはいるけれど、それでもやっぱり、悼みたい。
清秀は言います。
「誰かが誰かより辛いなんて、うそだ。誰だって同じくらい辛いんだ」(P233より抜粋)と。
この上巻では、それぞれ立場の違う3人の少女が登場します。
1人目は、度重なる苦難を乗り越えて王となり、けれどどう政を行えば良いかわからず葛藤、そして国について学ぼうと努力する。
2人目は、今まで住んでいたところとは全く違う世界に流されて、言葉もわからず孤独に苛まれ、なんとか職を得て必死に働くけれど、雇い主の無理難題に耐えかね、自分の身の上を哀れむ日々の中で、きっと自分の不幸を理解してくれるであろう1人目の少女によって救ってもらうシンデレラストーリーを頭の中で描いて現実逃避し、やがて雇い主のもとから脱出、けれど親切にしてくれた別の人の真意を知ろうとせず「あなたにはわからない」とかえって我が身を哀れみ、1人目に会えることを夢見て旅立ち、…やがて清秀と出逢う。
3人目は、王を諫めることの出来る地位にあったにも関わらず、王が定めた過酷な法律によって罪無き国民が大勢殺されていることを知ろうとさえせず、ついに叛乱が起きると叛乱を起こした者のことを「簒奪者」と恨み、己の無知を責められれば「わたくしは何も知らなかった」と開き直り、更には、1人目の少女の噂を聞いて、1人目の少女とは会ったこともないばかりかそもそも住んでいる国自体が違うというのに「わたしがこんな暮らしをしているのに。許せない」と逆恨みし、身柄を引き受けてくれた人の財産を盗んで逃走し、1人目の少女から王位を奪おうと企む始末。
…2人目は清秀と出逢ったことで大事なことに気づくことができた。…その代償は余りに大きかったけれど。…それでも気づくことが出来た。清秀の言葉の意味に。
3人目は楽俊(『月の影 影の海』の下巻に登場した心優しき人物)と出逢ったことで、楽俊に八つ当たりしながらも、楽俊のおかげで大事なことにようやく気づくことが出来た。国のこと、国民のことを思うことの大切さに。
自分の不幸に酔ってしまっているうちは、他の人と助け合うことなんて出来ないのです。
でももしそれに気づけたら、それから生き方を変えればいいのです。
気づくのが遅すぎた、と反省したら、そこからはただ進むだけ。
…と言ってくれているような気がする一冊です、この上巻は。
この3人の少女が今後どうなるのか気になるので、わたしは早速、続きにあたる下巻を読もうと思います。
が、清秀が迎えた最期を思うと…、なんだか下巻を開くのを躊躇してしまいます。
すぐには下巻を開けそうにありません。
清秀は小説の登場人物の1人に過ぎない、とわかってはいるけれど、それでもやっぱり、悼みたい。
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