主人公の珠晶(しゅしょう)と一緒に旅をしているような気分で、考えながら悩みながらわたしはこの作品を読み終えました。

 珠晶はまだ十二歳の女の子だけれど、王になることを目指して蓬山へ登ります。
 珠晶が生まれた時には既に国には王がおらず、そのせいで民は苦しむ一方なのに、周りの大人は王になることに挑もうともしなかったから。
 自分はただ嘆くだけの大人にはなりたくない、自分はやるべきことをちゃんとやりたい、その一心で、珠晶は自分の足で蓬山へと向かっていきます。

 その旅の途中で珠晶はたくさんの人々と出逢います。
 見ず知らずの人々であっても、人が集まることで自然とグループが生まれ、リーダーが現れ、秩序が出来ていきます。
 珠晶がリーダーとして属するグループ以外にも、王を目指すリーダー的人物は居ます。
 しかし、その人物は、王になりたいと思ってはいても、自分の考えがこれで良いのかと悩んだりはしない。他人の意見を鵜呑みにする時はあるけれども、妙なところで思考停止していて、他人の心中まで理解しようとしない。それに、いざとなれば部下を見捨てる。そしてそれについて後悔しようとしない。

 でも、珠晶は懸命に自分で考えようとする。
 他人の意見にムッとすることはあっても、他人の意見を聞いてそれを自分なりに理解しようとする。
 そして何より、珠晶は他人を見捨てない。全員を助けるのは無理だと悟ってはいるけれど、犠牲を出すのが嫌でたまらず、少しでも誰かを助けたい、と実際に行動する。
 そして、誰かが傷つけば悲しむ。

 これが、リーダーとして相応しい人とそうでない人の違いかもしれないなぁ、とわたしは読んでいてしみじみ思いました。
 珠晶は、相応しい。

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