国同士で協力したことが無い。
 軍が国境を越える事、それ自体が罪。
 他国を助けようとして軍を派遣しただけで、その途端、王も麒麟も天に裁かれて絶命し、王がいなくなった自分の国の方が荒れてしまう。
 
 …この巻に至って、我々の世界と十二国記の世界がいかに違うかがよく分かってきました。
 我々の世界だと、良くも悪くも軍が国境を越えてばかりですけどね…。
 十二国記の世界では、天が定めた条理に守られながらも縛られている…。
 十二国記の世界においても、これまで人々は神を見たことさえなかったのですが。
 「天が人を救うことなどあるはずがない」「人は自らを救うしかない」(P171から抜粋)という陽子の言葉は、我々の世界にも共通しており、心にグサリと刺さりました。

 そんな十二国記の世界に在っても、陽子たちは呼びかけ合い、各国の王たち・麒麟たちとうまく協力し合って、どうにか泰麒を探し出しました。
 …ところが、それでめでたしめでたしとはいきません。
 陽子の真意を理解出来ず、「これほど他国の王が出入りするのは何故か。あなたは慶を他国に譲り渡すおつもりか」(P218から抜粋)と、陽子を暗殺しようとする者たちが現れたからです。
 むしろ民と国のためを思って、善い王になろうとしてこれまで努力してきた陽子は、こう言われてすっかり虚脱してしまい、「…当の民がいらないと言うのなら、在り続けようとしても仕方がない」(P220から抜粋)と、抵抗さえしませんでした。
 幸い、景麒が駆け込んできて陽子は救われるのですが…。
 …暗殺者たちは浅はかだけれど、陽子のことを愚かな王だと誤解したその気持ちは分からなくはないし、民がいらないと言うのならわたしは要らないのだという陽子の考えも分からなくはないし、…なんだか読んでいてとても複雑な気持ちになる巻でした、この『黄昏の岸 暁の天〈下〉』は。

 さて。
 泰麒は見つかったけれど、泰王は見つかりません。
 わたしがまだ読んでいない『魔性の子』に何かヒントがあるのでしょうか? 或いは、『魔性の子』にまさに泰王その人が現れるのでしょうか?
 『魔性の子』をどのタイミングで読むべきか、とても悩みます…。

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