周防柳『逢坂の六人』
2014年10月21日 おすすめの本一覧
古今和歌集の勅撰にあたった紀貫之を主人公とした長編小説。
同じく勅撰にあたった紀友則、壬生忠岑、凡河内躬恒らの様子も描かれています。
まだまだ漢詩が幅を利かせていた時代に、日本の心を詠み上げる素晴らしさを日本初の勅撰和歌集という形であらわした彼らには、本当に頭が下がります。
気の遠くなるような数の和歌の中からこれはというものを選び出し、テーマごとに分類し、更にそれらを日本の四季の移ろいが感じられるように並べて…、という工夫を凝らした大仕事は相当大変だったことでしょう。
もしタイムマシンがあったなら、彼らにそっと差し入れをしたい気分です。
彼らの様子を読んでいると、古今和歌集だけでなく日本に伝わる他の歌集についても、かつて誰かが苦労して編纂してくれたからこそ、今の時代を生きるわたしたちが時を超えて歌を楽しめるのだよなぁ…とつくづく思いました。
また、この小説は、僧正遍照、在原業平、文屋康秀、喜撰法師(この小説においては紀貫之自身であるという設定)、小野小町、大友黒主、これら「六歌仙」と呼ばれる歌人たちも登場します。
登場するだけでなく、例えば在原業平は藤原高子との恋物語を、小野小町は白夜通いをされた思い出を、それぞれ語ってくれるのですから、なんとも豪華な構成の小説だなという印象です。
特に、在原業平が藤原高子との恋について語った後、「いや、もうよいわ」「そんなのは、神代の話だもの」(p119から抜粋)と締めくくるのが素敵。
在原業平の有名な和歌「ちはやぶる 神代も聞かず 竜田川 からくれなゐに 水くくるとは」に掛けているのでしょうね。
そうした優れた歌人たちとの交流を経て大人になった紀貫之が、和歌集の選者となる…。
と、この小説のこういう流れは良いのですが、在原業平と藤原高子の出会いをめぐる真実(あくまでこの小説での、ですが。真実は、今の時代を生きる者にはただ想像する他ないので)があまりにどろどろしているのでびっくり…。
あり得ないことではないだろうけれど、もしこれが真実だったら嫌だな…。
更に、幼い紀貫之が受けた災難にびっくり!
否、もうこれは災難というか虐待では!?と、わたしは読んでいて悲鳴をあげそうになりました。
そしたら在原業平が救世主の如く華麗に登場!
業平さま素敵!
そんなこんなで生臭い部分もあるこの小説ですが、幼い紀貫之を慈しむ在原業平の様子と、大人になった紀貫之が愛娘を慈しむ様子がとても綺麗。
暗い部分と綺麗な部分との対比が、まるで平安の世の陰と陽をもあらわしているかのよう。
同じく勅撰にあたった紀友則、壬生忠岑、凡河内躬恒らの様子も描かれています。
まだまだ漢詩が幅を利かせていた時代に、日本の心を詠み上げる素晴らしさを日本初の勅撰和歌集という形であらわした彼らには、本当に頭が下がります。
気の遠くなるような数の和歌の中からこれはというものを選び出し、テーマごとに分類し、更にそれらを日本の四季の移ろいが感じられるように並べて…、という工夫を凝らした大仕事は相当大変だったことでしょう。
もしタイムマシンがあったなら、彼らにそっと差し入れをしたい気分です。
彼らの様子を読んでいると、古今和歌集だけでなく日本に伝わる他の歌集についても、かつて誰かが苦労して編纂してくれたからこそ、今の時代を生きるわたしたちが時を超えて歌を楽しめるのだよなぁ…とつくづく思いました。
また、この小説は、僧正遍照、在原業平、文屋康秀、喜撰法師(この小説においては紀貫之自身であるという設定)、小野小町、大友黒主、これら「六歌仙」と呼ばれる歌人たちも登場します。
登場するだけでなく、例えば在原業平は藤原高子との恋物語を、小野小町は白夜通いをされた思い出を、それぞれ語ってくれるのですから、なんとも豪華な構成の小説だなという印象です。
特に、在原業平が藤原高子との恋について語った後、「いや、もうよいわ」「そんなのは、神代の話だもの」(p119から抜粋)と締めくくるのが素敵。
在原業平の有名な和歌「ちはやぶる 神代も聞かず 竜田川 からくれなゐに 水くくるとは」に掛けているのでしょうね。
そうした優れた歌人たちとの交流を経て大人になった紀貫之が、和歌集の選者となる…。
と、この小説のこういう流れは良いのですが、在原業平と藤原高子の出会いをめぐる真実(あくまでこの小説での、ですが。真実は、今の時代を生きる者にはただ想像する他ないので)があまりにどろどろしているのでびっくり…。
あり得ないことではないだろうけれど、もしこれが真実だったら嫌だな…。
更に、幼い紀貫之が受けた災難にびっくり!
否、もうこれは災難というか虐待では!?と、わたしは読んでいて悲鳴をあげそうになりました。
そしたら在原業平が救世主の如く華麗に登場!
業平さま素敵!
そんなこんなで生臭い部分もあるこの小説ですが、幼い紀貫之を慈しむ在原業平の様子と、大人になった紀貫之が愛娘を慈しむ様子がとても綺麗。
暗い部分と綺麗な部分との対比が、まるで平安の世の陰と陽をもあらわしているかのよう。
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