少なくとも二度以上読んで初めて謎が解ける小説。

一度目に読んだ時は、AさんがBさんについてCさんに語っているようだったのに、二度目以降に読むと、実際はBさんが実在しないどころかAさんもCさんも本当は別の人物だということが分かります。

この小説の中にもまた小説が出てきます。
しかもややこしいことに、この小説の登場人物の名前と小説内小説の登場人物の名前がまるっきり共通しているので、読み手としてはどこからどこまでが本筋でどこからどこまでが小説内小説なのか、境い目が分からなくなります。

もしかしたら二度この本を読んだだけでは足りず、三度、四度読んでもこの謎に納得しきれないかも。

現実と虚構の区別がつかない、だからこそ面白い小説です。

「高齢者の意識障害がしばしばそうであるのだが、実在の体験と、想像したことの境界線が消えてしまい、いっしょくたに結びついて意識のなかでひとつの物語を構成する。実際には会ったことのない俳優と、かつていっしょに旅行をした、などと云うのがそれにあてはまる」(P166から抜粋)
という記述がこの小説の謎を解くヒントになります。

現実と現実でないものの区別がつかなくなるのは、高齢者だけじゃない。

これからこの小説を読む方は、ぜひそのことを踏まえた上で読んでみてください。

たぶん…、例えば統合失調症などによる妄想で「俺はイエス・キリストだ!」などと叫ぶ人って、こういう混乱した世界にいるのかもしれませんね。
ちょうどこの小説の表紙のイラストのように、訳の分からない状態になっているのかも。

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