NHKスペシャル取材班 野村優夫『出生前診断、受けますか? 納得のいく「決断」のためにできること』
出生前診断を勧めるわけでも批判するわけでもなく、受けてもいいし受けなくてもいい、胎児に異常が見つかったからといって必ずしも中絶しないといけないわけでも中絶してはいけないわけでもない、という考え方をもとに書かれた本なので、妊婦さんやその周りの方々が読んでも「自分たちの選択は責められている」と辛い気持ちにならずに読める本だと思います。

一言で「出生前診断」と言っても、検査方法は様々。

この本は、超音波検査、羊水検査、絨毛検査、母体血清マーカー、NIPT(新型出生前検査)について、それぞれの検査でわかること、検査方法、検査にあたってのリスク、検査で分かることの限界などについて紹介しています。

21トリソミー(ダウン症)、18トリソミー(エドワード症候群)、13トリソミー、ターナー症候群、クラインフェルター症候群…。

主な染色体異常を挙げるだけでもこれだけ沢山あることに驚かされます。

この本の第2章に、医師から「胎児に異常がある」「うちの病院では、この症例で産んだ人はいない」と言われ、セカンドオピニオンを求めて行った他の病院でも前の病院からの案内状のデータをもとに「羊水検査をするまでもなく、胎児が亡くなってしまう可能性が高い」と言われたけれど、全く別の病院でしっかり検査をしてもらったら実際には胎児に異常が無いことが判明し、その子は無事に産まれて元気に走り回っている…というエピソードが紹介されていて、わたしは心の底からゾーッとしました。

もし誤診を信じて中絶してしまっていたらと思うと…。

医師の言うことを鵜呑みにするのではなく、いくつかの病院で検査をしてもらったり、自分たちなりに調べたり、また、インターネット上の情報はそもそも間違っている情報をコピー&ペーストして拡散されていることも多々あるので、本からだけとかインターネットだけとかに限らず色んな方面から情報収集したいですね。

また、この本では、「産む」「産まない」の決断に悩む人たち自身の葛藤も綴られています。

自分の命について決断するのも難しいのに、自分以外の人の命について決断するのは更に難しいですよね…。

悩んで当たり前だと思います。

正解なんて無いんだし…。

自分たちが納得出来るか出来ないか、という問題だから…。

この本には、

「障害があって産むにしても、事前にわかっていれば心の準備もできるし、経済的な準備もあるし。何歳まで生きられるのか、例えば1歳までで、それまで苦しむようだったら、あきらめることも考えないといけないし…」
(P16から抜粋)

「やはり社会保障が十分だとは思えないんです。親が頑張らないといけない。でも、もし障害のある子どもが生まれた場合、将来ずっと自分たちが生き続けられるわけではないですから、それを考えるとあきらめるかもしれない」
(P16から抜粋)

など、様々なご夫婦の意見が掲載されていて、読む度に考えさせられます。

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