著…北健一『電通事件 なぜ死ぬまで働かなければならないのか』
高橋まつりさんが身を投げたこと、そして、その遺書の内容は、今もなお衝撃的です。

自殺というと、よく、「命を粗末にして…」と眉をひそめる人や、「職場から逃げれば済んだのに」と言う人がいます。

ところが、高橋さんの職場での異常な労働状況を知ると、高橋さんが死を選んだというより、死に追いやられたのだ、ということがうかがえます。

ずーっと職場で働いていたのですから。

ずーっと。

ずーっと…。

睡眠時間はごくわずか。

休息を取れないと、人間の心のバランスはあっという間に崩れます。

真面目で努力家であればあるほど、職場からバックレるなんてことは出来ず、つい頑張ってしまいます。

頑張って、頑張って、なおも職場の人間からは罵倒され、更なる残業を求められ…。

高橋さんの遺書には「大好きで大切なお母さん」「ありがとう」「お母さん、自分を責めないでね。最高のお母さんだから」という言葉が綴られています。

極限状態になろうとも、最後の最後まで家族への気遣いを忘れなかった高橋さんの心情を想像すると泣けてきます。

ところが、高橋さんに限らず、死に追いやられる労働者は沢山います。

この本は、電通も含めて、過酷な労働を強いる職場の数々、その職場環境が労働者に与える心身への危険について訴えています。

ある人がインタビューで語った、

「これから人口が減っていくのに、このサービスと社会のあり方を続けてたら、そりゃ破綻しますよね」
(P59から抜粋)

という言葉が読み手の心に刺さります。

がむしゃらに頑張る「誰か」に過酷な量の仕事をさせてどうにか成り立ってきた社会が、その「誰か」の数が少なくなったら、立ち行かなくなるのは明らか…。

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