著…信田さよ子『さよなら、お母さん 墓守娘が決断する時』
過干渉タイプの毒親がいる方におすすめの本。

この本で紹介されているエピソードを通して、「自分の親がいかに異常か」を客観的に見るきっかけになります。

わたしはすぐにこのエピソードに釘付けになりました。

ノリコ(母親)がカオリ(娘)の自立を妨げるために発した、

「反対するのはね、カオリのためなの、すべてはカオリのためなんだから。〜(中略)カオリはママの宝物なのよ、どうして、どうしてなの……わかった、カオリはママを捨てる気なのね」
(P58から抜粋)

という言葉に、「わたしもこれ母親から言われたなぁ…」と、共感というか懐かしいというか苦笑いするしかない気持ちになりました。

このエピソードの場合、ノリコがべっとりと娘に粘着したり、年頃になってメイクに興味を持つというごく自然な成長を見せたことにノリコが「いやらしい」と言い放つなどしたために、カオリはノリコのことを「おかしい」と気づき、ノリコを避けるようになりました。

ノリコはアポ無しでカオリ宅を訪問して、ドアにメモを挟んで行ったり、自分を避けるカオリのことを「誰かに操られている」と思い込んでいたそうです。

わたしも同じ体験をしました。

まるで、溺れている母親にしがみつかれて、自分まで溺れかけているような、あの感覚といったら!

溺れている場合、普通の母親ならば「自分はいいから娘だけでも助かって欲しい」と願うでしょう。

ところが、「自分と娘は固い絆で結ばれているから一緒に溺れるのが当然」と思い込んでいる母親もこの世には存在します。

自分の母親が後者のタイプだと気づいた時の、あのとてつもない生き苦しさといったら!

また、カオリが「私、結婚したい人がいるの。会ってくれない?」と言うと、ノリコが「カオリが結婚するなんて嘘に違いない、そんなことが起きるはずもない」と〝確信〟した…というエピソード、わたしも体験しました。

わたしの場合、毒親あるあるなのですが、30歳を過ぎた社会人であるわたしが「結婚したい人がいるので会って欲しい」と伝えたところ、母親から「せっかく痛い思いをして産んであげたのに、わたしの言うことをきかない。産まなきゃ良かった」「あんたが嫁にいったら親の老後はどうなるの? 親を捨てるんだね。捨てなさい! わたしもあんたを捨てるから!」「〝結婚したら子どもが欲しい〟だなんて、そんないやらしいこと言わないで! 甥っ子と姪っ子が可愛くないの?」「どうしても結婚したいなら、実家と同じ市町村在住で親同士が知っている人でないとダメ」「そんなに結婚がしたいなら、両親を看取ってからでいいでしょ。あと30年後、あんたが60歳くらいになったら2人とも死ぬだろうから。60歳でも結婚する人は居るんだし」「近所の〇〇さんは40過ぎて独身だけど実家で親を介護しながら暮らしてて偉いわ。それなのにあんたは…」「取り柄のないあんたを好きになる人が居るはずない。あんたは騙されている。あんたを嫁に欲しいなんて相手の親もおかしいに違いない」「あんたを殺してわたしも死にたい。でも孫に迷惑がかかる。完全犯罪の方法が知りたい」とマシンガンのように口撃されて、「わたしが悪いのか…。わたしが親不孝なのか…」と自分を責めて悩み苦しみました。

カオリも「自分は人間ではないのか…。鬼ではないのか…」と苦しんだようです。

これって毒親の常套手段なんですよね。

あくまでも「親は被害者」「子どもは加害者」であるかのように子どもを洗脳し、「わたしはあなたのことを愛しているから、あなたのために言っているのよ」というテイで、正常にひとり立ちをしようとする子どもを阻もうとするのって。

カオリはノリコと一線を引く強さを持っているのが素晴らしいです。

カオリが相当な緊張状態の中で必死の努力をして実家に帰省しても、ノリコがまたべっとりと粘着しようとして、カオリに拒絶されたようですが、当たり前ですよね。

ノリコにとって、カオリは「自立して社会生活を送っている大人」ではないのですから。

たぶん一生、「カオリはわたしの可愛い可愛い、わたしの〝一部〟」という認識のままなのですから。

そして、カオリにとって、実家は気の休まるところではなく、ノリコのそばに居ると苦痛なのですから。

それにしても、カオリがノリコに流されずしっかりと自分を奮い立たせていて、その夫にも理解があるのが、本当に良かった。

また、カオリは夫の両親に初めて会った時、夫の両親が良い意味で普通の人たちだったので「いつもあんな風なの?」と心底驚いたそうです。

わたしも彼氏の両親に初めて会った時、そのあまりのまともさに「うちの親と全然違う!」と心底驚いたので、わたしはカオリに様々な点で非常に共感します。

ノリコは、その後、カオリに超長ったらしい手紙を書いたり、「カオリを黒木(カオリの夫)に拉致された」「黒木の親もグル」と妄想を募らせていたそうです。

わたしの母親はノリコにどっぷりと共感するだろうなぁ…。

わたしの母親もノリコみたいに手紙攻撃をしてくるし。

カオリには新しい家庭で幸せになって欲しいし、わたし自身も幸せにならねば、という気持ちで、わたしはこの本を読み終えました。

産んで育ててもらったという点では親に感謝してもし尽くせないけれど、だからといって、たった一度しかない人生を親のために棒に振るなんてナンセンスですよね。

親の希望通りに生きていたら、娘の人生めちゃくちゃ。

コメント

まるこ
2019年11月25日8:58

>産んで育ててもらったという点では親に感謝してもし尽くせないけれど、だからといって、たった一度しかない人生を親のために棒に振るなんてナンセンスですよね。

親の希望通りに生きていたら、娘の人生めちゃくちゃ。

の文章を拝読し深く頷いた私です。
が、切りたいけど切れない。私も母に依存しているんですかね??
申し訳無いですが私は心の自由が欲しいです。

G−dark
2019年11月26日19:25

心の自由、欲しいですよね…。
「共依存」と言うと言葉は悪いかもしれませんが、子ども側が母親に対して「母親に必要とされたい」と依存している部分は確かにあると思います。

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