ペットを飼い始める時。
 ペットを飼っている間。
 「いつか死んでしまう」という考えはいつも頭の中にあって、けれどまだそれを想像することはない。
 「人間だっていつか死ぬのだから」「いつか死んでしまうからこそ、生きていることを慈しめるのだから」という考えが助けてくれるから。
 悲しんだり泣いたりするのは、死を目の当たりにした時だけで済むように。それまでは、生きているペットを心の底から愛せるように。
 けれどその瞬間が訪れた時、もうそれらの考えは生きている側を助けてはくれない。
 体の半分をもぎ取られたような喪失感。
 その状態に陥ってしまった人にとって、新しいペットとの出逢いは更に苦しみを増すことにも救いになることにも成り得る。

 わたしの伯父の場合は救いの方になったらしい。
 長年一緒に暮らしてきた飼い猫が死んでひどく落ち込んでいた伯父は、ある日死んだ猫とそっくりな子猫を見つけ、拾って帰って来たと言う。わたしがその子猫を見て以前いた猫を思い出すくらいだから、伯父はいつもいつも思い出しているだろう。失ってしまったことも。
 それでも伯父はその子猫を拾わずにはいられなかったのだろう。
 ふわふわで小さくて可愛いアメリカンショートヘアの子猫。目つきまで何だか以前の猫と似ているけれど、性別が違うから同じ猫だと混同することはないだろう。
 今度は、「以前の猫が死ななければきっとこの子とは出逢えなかった。出逢えたとしても一緒に暮らそうとは思わなかっただろう」という考えが助けてくれる。心の底から愛せるようにしてくれる。
 きっと。

コメント

お気に入り日記の更新

最新のコメント

日記内を検索