不景気の今の世の中だからこそ必要な映画。

 借金の解決策として、誰かから新たに借金するのではなく、今ある家財を売り払った上でひたすら倹約するという道を選択した、武士・猪山直之。
 下級武士とはいえそれでも武家、そんなことをしたら表を歩けない、と猪山家の人々は驚愕し、抵抗するも、直之は強行。
 家族は惨めな思いをすることになり、直之自身もまた、職場で噂話のまととなったけれど、やがて確かに借金は消えた…。
 そんな物語です。
 
 しかし、家計が苦しいとはいえ、誇りを失ったわけではありません。
 川で四文拾ってきた、と話した息子を直之は叱りつけ、夜中であったにも関わらず、すぐに川へそのお金を戻しに行かせます。
 そんな直之の姿を見ていて、わたしは、多分直之は子どもに借金を遺したくないし、心のまっすぐな武士になって欲しいと願ってこういう厳しい躾ををしているのかもしれない…と思いました。

 けれど、直之の実の父親が亡くなった時まで、直之が悲しむ素振りを見せず、淡々と葬式費用の計算をしていたことが、身内が死んだ時まで算盤を弾くのか…と息子の心に直之へ対する嫌悪感を根付かせることになってしまいました…。
 
 親の心子知らず、子の心親知らずというか…。
 直之としては、実直な親の生き様を息子に見せたつもりだっただろうけど、直之の気持ちが余りにもまっすぐ過ぎて、息子にはすんなり伝わらず…。
 なんだか切ない映画…。

 とはいえ、今まさに不景気まっただ中のこの平成の世を生きる親たちに観て欲しい映画です。
 子どもを甘やかすのが子どもの為になるとは限らないから。
 まして、体面を気にしてお金を使い、結果借金を増やしてしまえば、子どもに遺せるのは借金という負の遺産のみ。
 
 親として、子どもにどんな姿を見せるべきなのか。見せたいのか。
 わたしにはまだ子どもはいませんが、そのヒントをこの映画から貰いました。

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