現実と非現実とがしっちゃかめっちゃかで、なんだか不思議の国のアリスの物語のよう。
 けれど、りりこという名のこのアリスは、不思議の国ではなく悪夢に迷い込んでしまった。
 極彩色の悪夢へと。
 
 もはや現実へ帰れなくなったこの醜く美しいアリスは、「首をお切り!」とトランプたちに命ずるハートの女王の如く君臨し、いつだって退屈で、いつだって周りの人々を傷つけ、その度にかえって自分の孤独に気づいて打ちひしがれている。
  
 その上まるで白雪姫の物語に出てくる魔女のように美貌にすがりついて「鏡よ鏡…」と繰り返す様は、とても哀れ。
 違法な美容整形という名の毒林檎をかじり続け、毒が全身をかけ巡っていくのに、呪いを解いてくれる王子様は、りりこには現れない。

 そんな残酷な世界に在っても、りりこが「見たいものを見せてあげる」と道を全うしたのは見事。
 美容整形を加えていない、元のままのパーツ…即ち目玉を破壊することで、りりこはりりことしての自分を殺した。
 …民衆は美貌の女王に陶酔するものだけれど、それ以上に、民衆はかつて栄華を誇った者が墜ちていくのを見るのが好きだから。
 ギロチンで首を切断されるか(マリーアントワネットは正確には女王ではなく王妃だけれど)、目玉を失うか、いずれも本質は特に変わらない。
 女王以上に民衆は気まぐれで、残酷で、退屈している。
 民衆は他人の不幸が好きなのだから…、カメラの前でどん底をさらけ出したりりこは、ある意味において最高のエンターテイナーと言えるのかもしれません。

 これからも強かに生き続けていくであろう最後のりりこの姿は、醜悪なはずなのに、ぞっとするほど妖しく美しかったです。

コメント

お気に入り日記の更新

最新のコメント

日記内を検索