1997年に発売されたこのゲームのテーマは解離性同一性障害。(当時は「多重人格」と表現されていました)
 ジャンルはテキストアドベンチャー。
 発売されてから15年以上年も経つのに、時々棚から引っ張り出してプレイしたくなる、不思議な味のある作品です。
 
 名作、と呼ぶには余りに癖があるけれど。
 プレイヤーを怖がらせるべきシーンよりも、何気ない日常を描いているだけのはずのシーンが妙に怖いからです。
 そもそもポリゴンが怖い。
 …それを言っちゃおしまいだけれど、でも、ポリゴンで描かれたキャラの目が…、全員はなから死んでいる感じがする。
 とは言えポリゴンだからこそ、人間らしさが排除された、まるで人形のような冷たい美しさというか…、ヒロインであるマリアの持つ、不幸な女性だけが纏ってしまう美しくも哀しいオーラなど、そういうものが伝わってくる気がします。
 
 マリアは沢山の人格を作り上げてしまいました。
 そうしないと自分自身が壊れてしまいそうだったから。
 けれどマリア本人には、自分の中に他の誰かがいるという自覚も、彼らを生み出すきっかけとなった或る事件の記憶も無い。
 その記憶は心の奥底にしまい込んだから。
 けれど、重要な記憶を無理矢理しまい込んでしまったために、心が何通りにもひび割れてしまった。
 マリアの意識は、ブツ、ブツ、と何度も途切れて、その度に別人格が活動を始めてしまいます。
 一番救いを求めているのはマリア自身なのに、その苦しみに蓋をした、せざるを得なかったマリアは、自分でも気づかぬうちに、ただ静かに…完全なる崩壊、すなわち死を待つばかり。
 自分で望んでいるわけでもないのに、死に誘われてしまう。
 
 だから、わたしは何度も何度もこのゲームをプレイしているにも関わらず、やっぱり何度も何度もマリアを救いたくなってしまいます。
 マリアが死亡するエンディングは見たことがありません。
 多分これからも見ることはないでしょう。
 
 わたしは仕事柄、解離性同一性障害の方と時々出会いますが、その度にこのゲームのことを思い出します。
 幼かった頃のわたしに、精神医学等への興味を抱くきっかけの一つをくれたゲームだから。

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